第1章 悪霊がいっぱい!?
一体誰がこの人に京都弁が丁寧な言葉だと教えたのだろうか。
取り敢えず笑いを堪えようと頬の内側の肉を噛み締める。
「そやったら仲良うにいかせてもらいますです。あんさんら全部が霊能者でっか?」
「そんなものかな……君は?」
「へえ、ボクはエクソシストいうやつでんがなです」
ブラウンさんが『エクソシスト』と言った瞬間、先程まで爆笑していた巫女さんと坊さんの笑いがピタリと止まった。
「たしかあれはカトリックの司祭以上でないとできないと思ったが……ずいぶん若い司祭だね」
「ハイ、ようご存知で。けやけどボクはもう十九でんかなです。若う見られてかなんのです。あんじょうたのみますです」
まさかのナルより年上。
たしか、海外の人は日本人より年上に見えると言うけれど……ブラウンさんは違うらしい。
その後、自己紹介はそこそこであたし達はナルに手渡された機材を手にして旧校舎へと入っていった。
何故か坊さんと巫女さんとブラウンさんも一緒に。
「こいつは……こんだけの機材をよくまあ集めたな」
「これだけ集めてムダ骨なんてご苦労さまね」
「いやあ、おれは見直しましたよ。こんだけのモン持ってる事務所の所長さまだからなあ。こりゃあ有能にちがいないわ」
二人の馬鹿にした言葉にムッとして、言い返そうとしたがそれよりナルの言葉が早かった。
「あなたがたは除霊に来たんですか、遊びに来たんですか?」
「これだから子どもはイヤなのよっ!」
巫女さんは怒ってヒールの踵を鳴らしながら教室を出ていき、坊さんも一緒になって出ていく。
(なーんか、嫌な奴ら。坊さんは見た目だけがタイプだったなぁ。人は見た目だけじゃいかんからな、中身も大事)
ふう……と息を吐いて二人を見送っていれば、ブラウンさんはオロオロとした様子で二人とこちらを交互に見た。
「……協力するのとちがうんどすか?……ボク、こういう雰囲気はかなんのです。できるだけ協力しますよっていてもよろしやろか」
「どうぞ」
ブラウンさんは2人と違っていい人だと思っていれば、一つの機材のテレビに黄色や青と色が現れている機材があった。
「なんだろ、これ」
「ね。ねえ、これなに?このまだらの……」
麻衣が質問すると、ナルは『黙れ』と言わんばかりに睨んでくる。