第4章 放課後の呪者
ぼーさんの言葉で、あたしと麻衣は『ああ……』と言葉を漏らした。
あの時、偶然なのか分からないが井戸に落ちた時に過去のようなものを見ていたのを思い出す。
「あれ、あの家の過去を見たんじゃないのか?」
「なんや、過去視(ボスト・コグニション)みたいですね」
「それとガス管が火をふいたとき、子どもの姿を見てるだろ。あのときすぐに礼美ちゃんの部屋に行ったらあの子はちゃんといた。ってことは結衣と麻衣が見たのは霊じゃねぇの?」
「ぼーさん、見てないようで見てるな」
「まあねん」
「麻衣と結衣は害意のあるものに対して異常なほど敏感だな。自己防衛本能、動物といっしょだ。敵をかぎわける」
「つまり、カラダは人間でもココロは野生動物ってわけね!」
後ろで綾子達が爆笑しているのが聞こえた。
そこで、あたしの中で何かがキレるのがわかった気がした。
これはナルに言わないでほしい……という約束は破っていいだろう。
それは麻衣も同じことを思っていたらしい。
「……ナル……いうからね」
「いいんだね……?」
あたしと麻衣が睨むと、ナルが僅かに肩を跳ねさせた。
「だれが動物だって?」
「だれが異常だって?え?」
「いや……それはもののたとえで」
あたしと麻衣が歩けば、その度にナルは気まずそうに後ろに下がっていく。
「んじゃ、あんたはなんなの?スプーンを曲げるのは異常じゃないのか?」
「……なんだって?」
「さわっただけでスプーンを曲げてちぎっちゃうのは異常じゃないわけ?」
「綺麗にちぎってたよね?指で押しただけで」
あたしと麻衣の言葉を聞いた綾子達が騒ぎ始めた。
「なになに?ソレ、どーゆーことよ」
「おい、ナル坊!おまえさん──」
「──ナル!」
騒ぎ声の中、一際大きくて鋭い声が飛んできた。
驚いて声のした方を振り向けば、そこにはいつのまにかリンさんが立っていたのである。
しかもかなり怖い顔つきをしてから。
「そんなことをしたんですか!絶対にやらないと……」
「麻衣、結衣!」
ナルに睨まれたが、あたしと麻衣はそそくさと逃げた。
巻き込まれてたまるか……と思いながら、あたしはぼーさんの背後に隠れる。
「ナル、いいですか!あなたは」
「わかった、いやわかってる」
「わかってません!」