第4章 放課後の呪者
「あの席に座っている人物が誰かわかっていれば、机の所有者に呪詛をかけるなどという回りくどい方法をとる必要はない。当人のみかければいい。なぜ、机に呪詛がかけられたのか──犯人が村山さんの名前を知らなかったからです」
「そんなこと……わたしだって誰か聞けば済むことですわ」
「しかし、あの時点ですでに先生たちは周囲から孤立していた。聞ける状況にありましたか?」
追い詰められているはず。
それなのに産砂先生は笑みを浮かべたままだった。
その笑みが逆に何故か恐ろしく感じてしまう。
「では……ほかの誰かだわ。わたしたちではなく」
「それもありえません。動機の点においておいても、ぼくと麻衣と結衣に呪詛をかけた意味が分からなくなる。麻衣と結衣はぼくが陰陽師だと笠井さんに誤って伝えていた。彼女はそれを先生に伝えています。笠井さんは麻衣と結衣と先生以外の人間とはほとんど口をきかない状態だそうですね。ということは、ぼくが陰陽師だと伝わったのは笠井さんと先生だけです。同じように麻衣と結衣の発揮したカンのことも」
「きいてませんわ」
「……あたし、いったよ……恵先生……」
笠井さんは今にも泣き出しそうだった。
それをタカが慰めるように背中を撫でていて、あたしと麻衣は信じられないという顔で産砂先生を見る。
(産砂先生……なんで……)
笠井さんは言っていた。
ナルが陰陽師と知って、産砂先生は感動していたと。
聞いているのに、何故否定するんだろう。
「それに、名前です。ぼくは自分のフルネームをすべての人にいったわけではない。おそらく知っているのは校長だけです。そして校長は麻衣と結衣の名前を知らない。笠井さんが知っていれば、先生にも知るチャンスがあります。ぼくの知る範囲では、犯人は先生でしかありえません」
「動機がありませんでしょう?」
「……笠井さんの超能力が引き起こした……笠井さんと先生自身への攻撃がその動機です。たかがそれだけのものが」
「あれはまくまで笠井さんの問題ですわ。わたしは確かに彼女を庇いましたけど、それは同情からで……」
「いいえ。先生自身の問題でもあったんです」
ハッキリとナルは告げる。
それでも産砂先生は何処か余裕があるような笑みを浮かべているだけだった。