第4章 放課後の呪者
「……よくできています。まちがいなく厭魅ですね。ただこれは、特定の個人ではなくこの席を所有者を呪うためのもののようです」
「だろうな。この席は特定の人物ではなく、ここに座った人物を事故にあわせる。それで呪われてるのは人ではなく机だろうと思ったんだ」
「はー……」
「なるほど……」
そこまでは考えがいかなかった。
流石ナルだなと思いながら、リンさんの手元にある人形を見る。
人の絵のような物が書かれているのだが、それがとても気味が悪い。
「このぶんだと陸上部の部室も、特定の個人ではなく部全体を狙ったものだと考えられるな」
ナルの言葉により、あたし達は陸上部の部室に向かう。
扉を開ければそこはコンクリートであり、とても埋められるような気がしない。
ナルはコンクリートの床を靴で叩く。
「……コンクリートか。ふつうは床下の地中だな?」
「そうです。天井裏のこともありますが……」
「天井から見てみるか」
ナルが椅子を持ち、それで立ち上がると天井を見る。
あたしと麻衣は他のところにないだろうか……と辺りを見渡した。
ナルは人形は床下の地中と言っていた。
隠せるような場所がほかにあるだろうか……と思っていれば、麻衣が床に置いてあった物に躓いた。
「あでっ、とっとと、はっ!」
「なにしてんのさあ……」
「いやあ……うっかり。う?」
ふと、麻衣が何かを見下ろしていた。
それに気がついて、あたしもそちらへと視線を落とす。
一部だけ、コンクリートが浮かんでいる。
なんだろうと思っていれば、麻衣がそれを動かした。
「あっ、動く……」
浮かんでいる一部のコンクリートを動かせば、その下は土。
あたしと麻衣は顔を見合わせ、麻衣がナルを呼んだ。
「──ナル!」
「どうした?」
慌てて、あたしと麻衣は土を手で掘る。
するとそこには人形が埋まっていて、それを麻衣と共に取り出した。
「「あったあ!!」」
二人でナルに手渡すと、彼はそれを確認した。
「よくやった。麻衣、結衣」
珍しく褒められてしまった。
褒められたことに驚いているあたしと、顔をほんのりと赤くしている麻衣。
「やはり厭魅にまちがいないな。呪わせた席と陸上部……その延長線上に犯人はいるはずだ」