第2章 人形の家
「かもな。女は……」
「井戸に身を投げて自殺した」
綾子の言葉に、ナルが若干目を見開かせた。
「……それはどうだか知らないが、要は富子の生没年がわかればよかったんだ。人形を作るのに必要だったから」
それだけを言うと、ナルはリンを連れてベースに戻る。
彼らの後ろ姿を全員見送り、結衣は少しだけ首を傾げた。
ナルはもしかしたら、最初から浄霊するつもりだったのかもしれない。
だから人形を作るために、富子の生没年について調べに出ていったのかもしれないと思った。
「……ナルが陰陽師だとはねえ」
「はへ?」
「おんみょーじ??」
「陰陽師。陰陽道の使い手……ってもわかんねぇよな。なんとゆーか……まあ、中国からきた呪術で、日本じゃ古くからあるワケ。人形を使う呪術の本家は陰陽道。神道でも使うけどな。人形を富子に見立てて浄霊するなんて高度なワザは、陰陽師にしかできんだろ」
法生の説明に、双子たちは理解したようなイマイチ理解出来てないような表情を浮かべる。
たが分かったとしたのは陰陽師にしか、あの人形は作れないということだ。
「すごいじゃない、陰陽師なんて」
「すごいの?」
「まーね。ちょっとカッコイイわよ」
綾子は感心したように呟く。
その言葉に双子たちは、ナルが出ていった方の扉を見る。
(ナルって、ホントに凄いんだなあ……)
結衣は改めて、ナルという人物が凄いのだと理解させられた気がした。
そして翌日のこと。
ホテルに移っていた典子と礼美は、浄霊が終わったという報告を受けて森下家に戻ってきた。
それと同時に、結衣たちは撤収作業も終わっていたので、あとは帰るだけ。
「──ほんとうに、ありがとうございました。兄も……できるだけはやく帰ってきてくれるそうです」
「ホント?よかった」
「安心できますね!」
結衣の言葉に、典子はまだ少し不安げにした。
「あの……ほんとうにもうだいじょうぶでしょうか」
「心配ないでしょう。気になるのなら、家をかわってもかまいませんよ。そのほうが安心出来るかもしれませんね」
ナルと典子が会話をしている中、礼美は少しだけモジモジとしながら結衣と麻衣を見上げていた。
「どうしたの、礼美ちゃん」