第5章 嫉妬
そういえば私、誰にも取られたくないとか言ってしまった。
そんなこと言える立場ではないのに…。
先程口走ってしまったことをグルグル考えながら、手を引かれながら廊下を歩く。
「誰にも取られたない、か…。」
副隊長はそう呟きながら歩いていた。
「僕もや。」
顔だけを振り向かせて、また幸せそうに笑う。
どうしてそんな風に笑うんですか?
そんな顔を見せられてしまえば、好きだと言ってしまいそうになる。
「なんでそんな、幸せそうに笑うんですか…?」
言ってはいけない言葉を振り払うように質問を投げかけた。
「んー?なんでって……幸せやもん。」
またそんな風に笑って…心臓壊れる…。
ずっとドキドキが止まらない。
機嫌が良い彼を見ていると、私まで笑顔になってしまう。
幸せそうな彼を見ていると、私まで幸せになる。
彼と同じ気持ちになれているんだと思うと、堪らなく嬉しくなってしまう。
そんなことを思っていると、彼は思い出したように話しかけた。
「そういえば、なんであの時止血せぇへんかったんや?しかもシールド全開やったはずやぞ?」
ここまでの怪我にならないはず…と続ける。
「保科副隊長が強すぎるんですよ……止血すら出来ませんでした。」
シールド全開だったおかげで内蔵が傷つかなかった。
けど、止血しようとする思考と余裕がなかった。
というか、スーツのコントロールをする程の力がなかったというかなんというか……うん、余裕がなかった。
「痕、残るかもしれへん。責任取れ言うんなら取るからな。」
なんの責任だろうか。
聞き返すが返事はなかった。
そもそも、副隊長にはなんの責任もない。
私が自ら飛び出し、先輩を庇った。
全て、私自身の責任だ。
その後はお互いなにも喋らず病室に戻った。