第12章 二人は
私は自分の胸に手をやった。
ナイフが刺さった後がのこってる。
「別に移動しなくても、そのまま刺しても僕は治せたのに。」
「それが不安だったの。心臓を刺して即死状態でも治せるのか。それに、啓明がその後からまたもう一度刺してくる可能性もあったし…。前日に『私を刺して、五条悟の顔を歪ませてやる』って言ってたから。」
悟さんは私の手の血も拭き始めた。
「それで自分を刺したのか?」
「…啓明に乱暴されたの。」
「……は?まって、どういう事。なるべく早く文書出したでしょ。に手を出さないように。」
ギリギリと私の腕を掴んでから、私は焦って首を振った。
「ごめん、言葉間違えた!乱暴なことをされたの!」
「はぁ?」
こめかみがぴくぴくしてる。
「乱暴ってそういうことじゃなくって!」
私は悟さんの頬を両手で掴んで落ち着かせた。
「いや、非道なことではあるんだけど、髪の毛掴んで振り回されたり、放り投げられたり…」
「それも充分酷いな。」
ちっと舌打ちをする悟さん。
「あと……えっと…」
「何?」
「キス…された。」
「多治家滅ぼす。五条家の名にかけて。」
どっかの名探偵みたいなことを言っているが、内容はかなり怖い。
「…だからね!」
私は悟さんの頬をもう一度両手で触れて私の方を向かせた。
「ムカついたし!腹が立ったの!ほんっとうに嫌いで、こんな奴に私の悟さんを苦しめさせるなんてさせたくなかった!それなら私の手でやってやりたかった!悟さんを困らせるのは、私だけでいいの!だから!自分で刺したの!」
悟さんは少し困ったような顔をして、頬にあった私の手を握った。
「確かに…こんな顔。にしか見せたくないかも。」
きゅんとしてしまった。
多分。悟さんの服のせい。髪型のせい。
「…好き。」
私は手を握っていた、悟さんの手の力が強くなった気がした。
「はぁ。」
またため息。