第35章 闇の男爵夫妻
椛「お願いします♪」
降谷「うん、ここに座って?」
椛「うん。」
前回、彼のドライヤー捌きは既に体感済みのため、安心して彼に全てを委ねる。
髪をすかれる感覚と、だんだんと頭の重さが軽くなって行く感覚に、安心して睡魔が襲ってくる。
ドライヤーの欠点は音がうるさくて会話が出来ない所だと思っていたが、彼が乾かしてくれるなら、この時間も大切なひと時に感じるものだから、不思議だ。
降谷「…終わったよ。」
ドライヤーの音が切れて、彼の声が聞こえると閉じていた瞳を開く。
後ろにいる彼の方に振り向くと、乾かしたての彼女の髪の毛束を手に取って口付けを落としていた。
間接照明だけが照らす夜のリビングでは、先程キッチンで見たより何倍も甘美に見える。
椛「髪、乾かしてくれてありがとう…
零、髪にキスするの好きだよね。
髪フェチなの?」
彼は閉じていた瞳を開く。
そんな小さな所作でも、何故か彼が行うと美しく見えるから不思議だ…
惚れた弱みだろうか…
そして薄暗い部屋の中でも、椛からは彼の瞳がキラキラと輝いて見えた。
降谷「どうだろう…
あまり今まで考えた事無かったけど…
そうなの?
かな?」
椛「ふふふっw
何それ?
疑問系なのw」
降谷「椛の髪は…
なんだか、思わず触りたくなってつい手を伸ばしてしまう…」