第29章 川品中央総合病院
椛「買い物するの?」
安室「えぇ、そうですよ。」
椛「何買うの?
もしかして…」
安室「椛さんを、その状態で連れ回すわけにはいかないでしょう?」
椛(やっぱり…)
椛「それなら着替えに戻るよ!」
安室「せっかく久しぶりに外に出てきたのだから、良いじゃないか!
新調しよう♪
それに、一度家に戻るより、こっちの方が近いし早いさ。」
椛「じゃあ支払いはちゃんと私がするよ!」
店内入り口の側、空いているスペースに車を駐車させると、彼女の方に顔を向けた。
安室「さっき先生にも言っただろ。
今回は僕に花を持たせろって。」
椛「確かにそう言ってたけど…」
安室「それに…
椛が、風見の買い物に付いて行きたいと言ったように…
俺だって、君が着る服を選んでみたいんだよ…」
椛「…」
安室「今回は僕からの
『快復祝い』という事で、良いじゃないか♪」
彼女に笑顔を向けながら話をする彼の様子は、どこか楽し気に見えた。
『服を選びたい』と言うのは、椛と医師に気を使ったというより、彼の本心だろう。
椛「そんな言い方ずるいよ…
私もう断れないじゃん…」
安室(椛はこういう時、甘えるのが苦手なのか…。)
嬉しいような、恥ずかしいような表情を彼に向ける。
どうやら、やっと彼の言い分に納得した様だ。