第29章 川品中央総合病院
安室「先生、彼女もこう言ってる事ですし、ここは引いて頂いて…」
医師「ご主人まで!
そんな訳にはいきませんよ!!」
安室「貴方は、彼女の傷を綺麗に治して下さった方だ。
御礼と言う言い方もおかしな話ですが…
ここはどうか僕に任せてください♪」
安室の言葉に側にいる2人は首を傾げる。
安室「彼女の服は、この後僕が面倒見ますから。
今日の所は僕に花を持たせて下さい♪
ねっ?」
安室はそう言うと、最後は医師に向けて何か合図をする様にウィンクを投げた。
医師はその安室のウィンク姿に思わず目を奪われて、頬を染めるが…
『ハッ!』と我に返って、安室の言葉を頭の中で繰り返すと、意図を汲んだ。
これ以上はやぶさかだと思ったのか…
引いたのは医師の方。
医師「分かりました…
そこまでおっしゃるなら…
心残りはありますが…
ご主人にお任せします。」
安室「えぇ、お任せください。」
安室の言葉を聞くと、医師は車椅子に座りながら、再び御礼を述べ、頭を下げた。
警察が到着して状況確認を求められているのか、先程拘束した男の監視を頼んだ男性看護師が、こちらにかけてくる姿が視界の側に映る。
安室「行きましょうか。」
椛の肩に手を回して、警察の方へ行こうと身体の向きを変えようとすると、再度医師に声をかけられる。
医師「結城さん!」
医師に名前を呼ばれて一度足を止めて、振り向いた。