第11章 追憶のカラクリ箱
藍子「ただいまぁ〜♪」
両手にギリギリ収まる程のサイズの箱と、大きめの紙袋を持って、リビングに戻ってきた藍子。
皆が食事しているダイニングテーブルでは無く、
先程まで康彦と、安室が座っていたソファーの前にあるローテーブルの上に、今持ってきた箱を置いた。
藍子「椛さん!椛さん!!
食べてる所悪いのだけど、思い出したうちに♪
ちょっとこちらに来てくださらない?」
そう言って彼女を手招きする藍子。
椛「はい?」
手に持っていた箸を置いて立ち上がり、ローテーブルの方に移動する。
彼女が藍子の元にやってくると、
藍子「開けてみてくれない?」
そう言って彼女に微笑みかけた。
その様子が気になり、ダイニングテーブルに座り食事をしてる皆も、『何が出てくるのか?』と視線を向ける。
康彦だけは知っているのか、朗らかな表情で2人を見つめていた。
椛は箱の蓋に手をかけて、上にゆっくり持ち上げる。
布に包まれている中身を広げると、西陣織が美しい草履バックセットが出てきた。
椛「おぉ〜!
これは随分と、素敵な草履バックセットですね…。」
織紋様の美しさに感嘆のため息が思わず漏れる。