第40章 立夏の約束事
1人で色々勝手に思考を巡らせ、そして納得する椛。
今ならもう一回してもバレないと思い、再び顔を近づけると、先程よりも長めに口付けを落とす。
それでもやはり今日は起きない様で…
自分のベットで安心し切った様に眠っている彼の姿に、愛おしさが募る。
椛(いつも日本を守ってくれてありがとう。
休める時はゆっくり休んで…)
音を立てないようにベットから離れて部屋を出ると、静かにそっと寝室の扉を閉めた。
未だ夢心地の中、何か物足りなさを感じて、温もりを求めるように腕を伸ばす。
掴んでも掴んでも空を切るような感覚に、違和感と、寂しさを覚えてゆっくりと瞼を上げた。
昨晩、『絶対離さまい』と強く抱きしめて眠りについた筈なのに、腕の中にいたはずの彼女の姿はなく…
すぐ隣にあった筈の温もりは空虚と消え、彼女の香りだけがまだ、シーツに微かに漂っている様な気がした。
降谷(椛は先に、起きたのか…?)
彼女が寝ていたであろう場所に指先を落としながら、静かに息を吐いた。
目覚めた時、真っ先に視界に入るはずの彼女がいないだけで、こんなにも空気が冷たく感じるとは。
胸の中に、なんとも言えない寂しさが巣食う。