第3章 お前も一緒に来るか?
そして目を合わせる。
「周りに知られるのが嫌だったら、無闇に話したりしねえよ。サッカー部の奴らにもちゃんと言っておく。仲良くなりてえ奴に自分のことを知ってもらいたい時に、お前自身の口で言えばいい。まあ、他人のことをペラペラ話すのも、礼儀に反するっつーか、正々堂々じゃねえしな」
「……」
國神本人は自覚せず、昨日LINEを交換した時のような眼差しを逸崎に向ける。
「ダメか…?」
「……ちょっと待ってて」
逸崎はポケットからスマホを取り出す。
「沙織さんに念の為確認してみる」
帰りが遅くなるかもしれないなら、同居者に一言伝えておくのが礼儀というものだ。
逸崎は國神に背を向けて、スマホの画面を耳に当てる。
ルルルルルッ ルルルルルッ
ドキドキドキドキ
心臓の鼓動音が電話の音に釣られるように高鳴り、激しくなっていく。
國神が見えないところで、逸崎は頬を赤らめていた。
昨日と同じような優しい言葉と優しい目でおねだりされて、乙女心をくすぐられていた。
そんな人からお願いされたら、断れるわけがない。
(あざとすぎるよ國神くん……)
ガチャ
『充ちゃん?』
「あ!もしもし沙織さん?!仕事中にごめんなさい…!」
『い、いや?大丈夫だよ。今休憩中だし。てか、充ちゃん、声いつもより大きくない?』
「き、気のせいだよ!それよりこれから友達と遊びに行きたいんだけど、帰りは遅くなりそうなんだけど、いいかな?」
『!』
沙織さんは電話越しでしばらく間を置いてから『うん。もちろんだよ』と付け加える。
そしていつもの調子に戻る。
『もしかして、國神くんと一緒?』
「!」
逸崎は声を詰まらせて、図星だった。
『やるじゃ〜ん。昨日あんなに素直じゃなかったのに、早速アプローチなんて……』
「ち、違うよッ…!逆に誘われたんだよ。変な勘違いしないでよッ…!」
(何か凄ぇ話し込んでんな…)
通話中とはいえ、物静かで通っている逸崎が1人で取り乱している光景は、國神の目から見たら何だか新鮮だった。
けど……