第6章 ハスター 〜触手〜
「、帰ったぞ」
ドアを開けると、に頭を踏まれている謝必安と、謝必安の頭を踏んでいるがいた。
これは一体何事なんだ。
『…ハスター、おはよう』
の顔を見てみると、恐怖と困惑とが混ざった表情をしていた。
やはり白いのは部屋に入れない方が良かったかもしれない。
「、ひとまず足を退けてやれ。白いのは出ていけ」
は大人しく足を退けたが、謝必安が食い下がった。足に抱きつきながら、
『あれから范無咎が上の空で気持ち悪いんです、助けてください!!』
と懇願していた。
「知らん、行け」
触手で頭を叩き、そのまま部屋の外へ追い出した。
困ったものだ…。変な事をするから変な事が起こる。人に言えた立場では無いが。
チラとの様子を確認してみると、彼女もすっかり起きたようで伸びをしていた。
目が合い、そのまま視線を手元に向けられる。
『そのお刺身ハスターのご飯?わけてよ』
キラキラした目で寄られる。
「お前の為に取ってきた。食え」
気落ちしていないかと少しでも心配した自分が馬鹿らしくなった。
やったー、と言いながらが刺身を食べ出した。
美味そうに何かを頬張る人の子は見てて面白い。
人にとっての食事は、腹を満たし栄養を摂るだけの物だと思っていたが、そうでは無いらしい。
『ハスターは食べないのかい?私が食べきっちゃうよ』
「食え」
椅子に座り、を見守る。口に合っているようだ。随分美味いのだろう、今まで見たことないほど口元を緩ませている。
この娘を自身の物にしたい。いっその事手篭めにしてしまおうか?
しかし、そんなことをすれば自分とは言えタダでは済まないだろう。
どうしてくれようか。