第18章 術式
野薔薇に頭を下げたが、何の反応もなくてこれは相当怒ってるなと思って顔をあげたら、今まで見たことないほど顔を真っ赤に染め上げ、繋がれていない手の甲で口を隠していた。
え、何その反応。
めっちゃ乙女じゃん。
「野薔薇……?」
「ちょ、今こっち見んな」
「いや、ごめん。穏便に済ませようと思って……」
「にときめくとは思わなかったわー。屈辱」
「屈辱なのかよ」
クソでかため息を吐く野薔薇は、赤くなった顔を落ち着かせるためにパタパタと手で仰いだ。
もう男どもはいないし、繋いでいる手を離そうと絡めていた指をするりと外した。
が、離れる直前。
ぎゅっと野薔薇が手を繋いできた。
「の、野薔薇……さん?」
戸惑いながら野薔薇にこの状況は何かと尋ねようと口を開いたら、野薔薇は乱れた髪の毛を一度かき上げ手櫛でほぐし、白い歯を見せて私に笑いかけた。
「デートなんでしょ。今日一日は手を繋いでいましょ」
「あ、はい……」
何そのかっこいい仕草。
私もお前にときめくなんて思っていなかったんだけど。
きゅってした。
心臓がきゅって。
「野薔薇って女にモテそう」
「そのままそっくり返してやるわよ」
女子高校生二人。
恋人繋ぎをしたまましばらくショッピングを楽しんだ。
周りの目なんて気にもならないほど、すごく楽しかった。
友達と、親友とこうして一緒に遊んで笑えるのがすごく楽しくて、嬉しくて、幸せだと感じた。
野薔薇に服を何着か選んでもらい、店を出る頃には既に19時を回っていた。
高専に戻ったら夕飯を作って風呂入って、明日の準備を早くして……。
「あ」
「なによ」
帰りの電車の中。
私は頭の中で帰った後の計画を立てていた。
その時、ふと思い出した。
明日のこと。
野薔薇は知っているだろうか。
五条悟も来るって事。