第16章 野球
色々やけになった野薔薇は、見事に出塁。
続く伏黒は送りバントで野薔薇を塁へと進ませた。
これで一死二塁。
ベンチに戻ってくる伏黒は仕事を終えたような表情をしている。
「送りバントね……」
「なんだよ、文句あるのか」
「ねえよ。ただ、もっと欲張ればいいのにって思っただけ」
「は?」
「素人野球なんだからさ、変にルールに縛られる必要なくない?」
「どういう意味だよ」
「べっつにぃ~」
私は唇を尖らせた。
高校野球やプロ野球なら伏黒の送りバントは正解。
というか花丸いっぱい100点満点の模範解答だ。
だけど、今のこの試合は草野球であって交流会。
もっと自分のやりたいようにやればいいのに、とは思う。
京都校に負けたくはないし、私も作戦は立てたけど、それは打順とポジションだけ。
あとは好きなようにやらせようと思ってるし、がちがちに固めたルールでやっても面白くない。
というか、人数足りてないし術式を使用できる時点でもはや普通の野球とは違うから、緩い感じのルールなのは目に見えてわかる。
というのに、伏黒の奴は無難にこなすからなぁ。
自分の好きなように打てよって思うけど、面倒なことになりそうだから言わない。