第13章 狂愛
斎藤廉の家に着くまでの短い時間の中でも絵はどんどん形を変えて行っている。
きっと私が一度呪霊を祓ってしまったから、時間がないと思ったのかもしれない。
家の前に車を停め、伊地知さんは帳を下ろす。
私達以外は侵入のできない結界。
急いで409号室へと行き、インターホンを鳴らす。
中からどたどたと騒がしい音が聴こえてくる。
時々悲鳴も聞こえる。
どんなにドアを叩いても開けられる様子はない。
どうしよう……。
「釘崎、どけ!!」
ドアの前にいた私の肩を掴む夏油は、ポーチの中から金具のようなものを幾つか取り出し、扉の前に座った。
そして金具を鍵穴へと突っ込む。
「ピッキング……⁉」
「私の特技」
淡々と言っているけど、それ犯罪じゃない?と思ったけど、まさかこんなところで夏油の特技が役に立つとは思わなかった。
カチャリ、と鍵の開く音が聴こえると瞬時に夏油は扉を開けた。
「斎藤廉!!」
靴すら脱がずに玄関を上がれば、また悲鳴が聞こえる。
「玉犬!!」
伏黒が式神を出せば、玉犬は2階へと向かった。
その後を追いかけ、私達も階段を駆け上がる。