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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第13章 狂愛







「……ま、ちょ……吐く、かも」

夏油のその声に我に返る私達。
壁を背にし口を抑える夏油は小さく丸まり、嘔吐いていた。
掛軸から手を放した伏黒が夏油の腕を取り急いでトイレへと駆けこむ。
暫くすれば「お"えっ!!」とゲロを吐く声が聞こえた。
その度に、伏黒が「大丈夫だ、全部吐け。我慢すんな」と声を掛け続けて。
まるで慣れたその手つきに、夏油はよく吐くのだろうかと疑問が湧いたけど、それ以上にあの絵が不気味すぎて飛んでいった。

吐くだけ吐いた夏油がトイレから戻っきたのは数分後のこと。
げっそりとした表情はしているが落ち着きは取り戻したみたい。

「大丈夫?」
「平気……。吐いたらすっきりした」
「そうは見えないんだけど……」

ホテルの自販機で購入した水を伏黒が夏油に渡す。
飲みかけだったけど、夏油は気にする様子もなく全部飲み干した。
ぷはっと息を漏らし、口元を拭う。
そうすれば顔色の悪かった夏油は普段と変わらない表情へと戻っていた。

「掛軸は?」
「あんたが吐いてる間にしまったわよ」
「そう。ごめん、ありがとう」

夏油が素直なときは精神的に少し弱っているときか何かがあったとき。
今回は前者ね。
まだ出会って2か月くらいかしら。
意外と夏油はわかりやすい性格をしているから、なんとなくわかっちゃうのよね。

「夏油の言っていることが濃厚になってきたな」

ベッドに腰かけて話し合う。
あの掛軸と呪霊は繋がっている可能性は大きくなってきたと言えるのは、絵が形を変えたため。

「……となると、斎藤廉が危ないんじゃ……」

夏油の言葉に私たちは顔を見合わせる。
この掛軸の呪いを吸っているとして、形を変えたのなら。
呪霊は完全にあの子を呪おうとしている。
呪力を感じられないと思っていたけど、それは影を潜めていたということになる。

「急ぐぞ!!」

部屋を飛び出し、伊地知さんに連絡を取る。
すぐにホテル前に着てくれるということで、私たちは掛軸を持って再び斎藤廉の家へと向かった。





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