第5章 特級
――夏油side――
私は弾いていたピアノの蓋を静かに閉じる。
任務が入った。
今回は一年4人。
事前に渡された資料には、少年院で目視された呪胎が特級仮想怨霊であることや、少年院のあらゆる情報が開示されている。
それらすべてに目を通し、思った事がある。
「こんなの、一年がやる仕事じゃない」
何か裏がありそうな気がしたけれど。
呪術師は常に人手不足だ。
五条悟は出張でいないし、となれば仕事はこちらに回ってくるのは妥当。
「夏油、行くぞ」
ピアノのある教室に伏黒が来た。
どうやら仕事に行く準備が整ったようだ。
椅子から腰を上げて、私は何度目かのため息を吐く。
二級と準一級の術師に務まればいいが、吉と出るか凶と出るかわかったものじゃないな。
7月の雨が降り注ぐ中。
伊地知さんの車に乗り込み、現場へと向かった。
閉鎖された少年院の前で、伊地知さんは今回の件を簡単に説明してくれた。