第1章 復讐
私は五条悟の顔面目掛けて回し蹴りをし避けたところにもう一度蹴りをした。
二段構えだ。
油断したのか足に当たった感触があった。
口元を歪めた私の耳に聞こえるのは、なんともなさそうな男の笑い声。
確かに当たったはず……。
「当たったと勘違いしてるところ悪いけど、それ僕との間にある"無限"だから。まだ解いちゃいないよ」
五条悟はそう言うと、私の腕を掴んできた。
ギリギリと握られる腕が悲鳴を上げるくらい、力が強くて暴れたくても暴れられない。
無駄な反抗とはわかってはいても睨まずにはいられなかった。
「さて、君はどこの誰?どうして僕を殺そうとするのかな?」
口調は柔らかいが音は相当警戒している。
それでいい。
そのまま警戒していろ。
私は腕の痛みに耐えながら、にやりと笑う。
「夏油。正真正銘、夏油傑の妹だ。お前が殺した男の妹だよ‼」
その言葉に、今まで私たちの対峙を見ていた人間も五条悟も表情を変えた。
一瞬の隙が五条悟に生まれる。
私は掴まれていない腕の裾から鍵を取り出し、五条悟の首元にめがけて撃ち込む。
が、それはギリギリのところで止まった。
解いたんじゃなかったのかよ……!!
そんな私の考えをよそに、五条悟は私の手首を掴むと外側へと捻った。
「うあっ!!!」
痛みに耐えられず地面に伏せってしまった。
そのまま伏せた状態で両腕を背中側に回され、挙句五条悟は体重をかけてきた。
身動き一つできない私は、ただ地面に顔を擦るだけ。
砂利が頬や額に食い込み、それも合わせて痛みに顔を歪める。
「お前、本当に傑の妹……?」
「兄の名前を気安く呼ぶな、クズが!!」
「ん~、どうやら本当っぽいな」
「離せ!!殺してやる!!」
「この程度で僕を殺せると思うなよ、クソガキ」
その言葉を最後に、私の意識は飛んだ。