第31章 契約破棄
11月19日、明日は蜂楽の合宿招集。
いつもと変わらない朝……
そうでなくなった理由は、昨夜かかってきた一本の電話にあった。
急な仕事が入った優さんは、朝からバタついていた。
なんでも関西の方の美術館から、“廻物展”で出品した絵を買い取りたいとオファーを受けたみたいだ。
美術館から声が掛かるなんて、この上ない名誉。
“かいぶつ”の絵は、50年後・100年後の後世に残ることになる。
“廻物展”が素晴らしい個展だったことが、世の中に証明されたんだ。
やっぱり優さんは、とってもすごい人だ。
「今夜は帰れないと思う。明日から廻の合宿だから面倒かけるけどよろしくね、夢ちゃん!」
慌ただしくも、嬉しそうに準備をする優さん。
「任せてください。帰ったらお祝いしましょう!」
「夢ちゃんの大学合格と一緒にね!そろそろ結果、判るんじゃない?」
「そうですね。お祝い…できたらいいなぁ。」
「だいじょーぶ、絶対できるって!私も廻も、絶対的に信じてるんだから!」
微笑むと、とびっきりの笑顔で返してくれる。
こんな素敵な優さんのアシスタントにしてもらって、本当に誇らしい。
「今日はバイトあるの?」
「今日は休みもらいました。廻と…一緒にいます。」
蜂楽は明日からしばらく帰らないかもしれない。
今夜はゆっくり、一緒に過ごしたい。