第30章 裏切り
「俺のミサンガには、夢ちゃんの夢をお願いしてある。」
───ああ、なんだ。
また私と……お揃いだね。
「それと夢ちゃんと……
ずーーーーっと一緒にいられますように、って!」
やっぱり蜂楽は……ズルいよね。
私のこと、勝手に壊そうとして。
それでもまだ、私を欲してきて。
背を向け合う程、一緒に生きようとしてくる───。
「ミサンガにお願いふたつもしちゃいけないんだー。両方叶わなくてもしーらない。」
「にゃはは!俺、ズルいからね♪」
「賽銭5円だけでお願い10個くらいするでしょ?」
「え、フツーでしょ?」
「ふふっ。いいよねそういうとこ。あ、私そろそろ行くね。」
「うん。行っといで!」
ハグを解くと急に寒くなる。
蜂楽との季節は、春から冬へと巡ってる。
「楽しんできてね♪」
大きく手を振り合って、改札に入った。
口パクで“ありがとう”って伝えたけど……
あなたは気付いてくれたかな?
試験後に言うつもりだったこの言葉。
もう言っちゃったから……
今夜は……なんて言おう?
“……夢、あいしてるからね……。”
さっきの呟き、ちゃんと届いたからね。