第5章 適性試験
大忙しなのは仕方ない。
この仕事を選んだのは自身だから、後悔はない。
ただ、本来必要のない仕事が増えるのはいただけない。
その“本来必要ない仕事”とは、士道龍聖の暴力行為によって増えた怪我人の処置だった。
ドリブルもまともにできないどころかルールすらまともに知らないだって、暴力が一発でアウトなものだとわかっている。
だからこそ、積極的に暴行する士道が想定外だったのだ。
「甚八くん。士道龍聖の暴力行為が行き過ぎたらどうする?」
「電気ショック」
「え、やめてほしい」
ボディスーツに仕込まれた対暴動用電気ショック機能は、使われたら後始末がとんでもなく面倒である。
今いる医療班の中でボディスーツの構造まで頭に入れているのはしかいないため、士道の処置はがやるしかない。
「じゃちゃんがなんとかして」
「私がなんとかしていいならもっと早く言ってよ」
思わず苦情を言ってしまうほど、は忙しかったらしい。
怒ったは誰も手に負えないので、今後はちょっと気をつけようと絵心はこっそり反省した。
「やめろ莫迦共」
糸師凛と士道龍聖の喧嘩がヒートアップし、士道が本気の蹴りを構える直前、士道の首にきゅ、という衝撃が加わり士道はばたりと倒れた。
はたから見れば音も気配もなく現れたに一瞬触れられただけで士道は気絶した図だ。
「さん!?」
「士道龍聖を仕置き部屋まで運ぶ。試合終了直後で悪いが時光青志、手を貸してくれ」
「はっはいいい」
「糸師凛は医務室。付き添いは清羅刃、頼む」
「…ッス」
「…あい」
第三者が来て、士道が気絶していくらか冷静になった凛は大人しくに従った。
その後の選手たちは絵心のアナウンス通りに動き、適性試験は終了した。
士道を担いだ時光がの誘導で辿り着いた仕置き部屋には、あまり見たことのないタイプの拘束具が置いてあった。
「ご苦労だった。そこに座らせたら戻っていいよ」
「あああのさんこれ」
「痛くないけど動けない拘束具」
「なんでこんなものが」
「実家から借りた」
「実家から借りた!!??」
時光青志の心労は続く。