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【青監夢】跡継ぎを産めと言われて収監されました

第2章 青薔薇の呪い


「10年も欧州にいたから、ラテン系言語はマスターした。で、満を辞して学ぼうと思う人達がたくさんいたのがこの国だった」
「…ここドイツだぞ」
「知ってる。ドイツ語覚えるのけっこう頑張った」


ドイツにある小さな家では、同い年の男女2人がシェアハウスしていた。
男の名はミヒャエル・カイザーという。
女の名は継国という。
2人はきょうだいでもないし幼馴染でもない。
まだ15歳の彼らは夫婦でもない。
ただ、このドイツにおいて唯一心を預けられるからここにいる、それだけのこと。

境遇が違う彼らは歩む道も違う。
カイザーはフットボールプレイヤーとして大成しなければならないプレッシャーを生きている。
は生家の傀儡にならないために、自立したドクターを目指して留学中である。

衣食住が同じ場所にある2人は性格は違うが、同じ空間に長くいても決して不快に思うことはなかった。
は、その正体が親愛や友愛に近しいものだと思い至っているが、そんなものとは無縁だったカイザーはまだ自覚がなかった。


「…本当に日本に行くのか」
「帰る、の方が正しいかな。私の居場所はあそこだ」


カイザーは臆病だ。
臆病だから、が日本に帰国する前日までがドイツにいる理由が聞けなかった。
臆病だから、その先にある言葉が紡げなかった。


「次会えるのはいつだ」
「高卒認定取りたいから、今回みたいに何ヶ月も同じ国にいられるのは3年後になる」
「3年……」


15の彼らにとって3年は長い。
ただの友達ならば、休日に待ち合わせでもして会いに行くことは可能だろうが、生憎2人は普通の友達というものを知らない。


「Mr.ダークによろしく言っといて」
「言いたくねぇ」
「こら」
「…お前のクソジジイにもよろしく言え」
「やだ」


カイザーの恩人の1人であるレイ・ダークと、の後見人である曽祖父。
世話になったし大きな恩もあるが、それはそれとして直接礼を言うのはなんかやだ、というのが2人の共通した子供らしい思考だ。
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