第14章 三毛猫の独白。クロ猫の噛み跡
「おれも、がおれとクロ以外のヒト甘やかしてるのは嫌だよ。」
「エッ?」
「研磨お前……ッ!」
「別にこれくらいいいでしょ。」
好き、とかはよくわかんない。けれど、が1人でおれたちの所から離れるのは、嫌かもしれない。付き合うならクロかおれにして欲しい。なんて自分勝手でわがままな事を思った。
◾︎視点◾︎
新幹線が宮城に着き、私たちは猫又監督と直井コーチに引率されて合宿所へ向かっていた。1度荷物を置いて、そのままバスで槻木澤と練習試合だ。…まぁ私は行けないんだけど!!
「初日から午後に練習試合入れるなんて酷いよコーチぃー…!」
「ははは、いやスマン。アイツらの面倒頼むな。」
「芝山ちゃんとノート取ってきてね……。」
「はいっ!」
「犬岡も練習試合楽しんでね…。」
「はいっス!」
合宿初日。この数日間の食事諸々任された私はこの育ち盛り高校生達の大量のご飯を作る為、下拵えに追われる事となった。たかが3日、されど3日だ。人数と運動量を考えたらその日その日に作るのはめちゃめちゃきつい。それなら初日に纏めてある程度準備してしまった方が楽だ。それでも大変なのに変わりはないけど。
「見えて来たな。荷物置いたら少し休んで出発するからちゃんと支度しろよお前ら。」
「「「「はい!」」」」
猫又監督の声に全員が元気いっぱいに返事をする。見えて来た合宿所の近くにはめちゃくちゃ見覚えがあるバンが停まっていた。ウチの車だわ。丁度買い物袋を持って出て来た母と目が合うと、ブンブン手を振ってくる。恥ずかしい、辞めて欲しい。私は皆を置いて慌てて車まで駆け寄った。まさか鉢合わせするとは思わなかった…!
「ー!久しぶりやなぁ!ちょっと身長伸びたんちゃう?」
「伸びてへんよ、買い物おおきに。父さんも!」
「おう、それにしても烏野と試合とはまた羨ましいなぁ!俺も仕事が無かったら見に行きたかったよ〜。」
「あ、そうか父さんの頃はまだ親交あったんやっけ?」
運転席を覗くとハンドルに腕を乗せた父がひらりと手を振る。すると追いついて来た猫又先生が後ろから顔を覗かせた。父はビクリと跳ね上がり慌てて車から出て来る。
「ねッ……猫又先生!お久しぶりです!」
「はっは!!辰樹じゃねぇの!お前も随分老けたなぁ!」