第13章 day10 morning ホークス
相澤side
いつも高笑いをしている物間が
落ち込んだ様子を隠すこともなく視線を落とす
そりゃ仕方ない
昨日から生徒達も必死で探していた
みんな無事だった事に安堵はしたものの
警官や俺たちの態度から何があったか分からない程子供じゃなかった
「とりあえず生きてた‥今のところ大きな怪我をしたとの報告もない。そんな暗い顔見せないように、明日までには気持ち切り替えとけ」
「はい‥」
キツく握る拳
肩に手を置くと小さく頷いた
寮の中に戻ってからも生徒達の間には暗い空気が漂っていて
いつもうるさい上鳴ですら黙り込んでいた
そんな沈黙を破るかのように
いつ電話が来ても気付く為に大音量にしていた携帯の着信音が鳴り響く
そこには
先生の名前が表示されていた
「ーっ‥‥もしもし」
『相澤先生っ‥‥沢山お電話頂いていたのにすみません‥ご心配をおかけして‥すみません』
昨日からずっと聞きたくて仕方のなかった声が
受話器の向こうから聞こえる
固くなった心を解きほぐすような
柔らかで
可愛らしい声
生徒達がいなかったら不覚にも泣いてしまいそうだった
「‥おかえり」
『っ‥ただいまです‥』
他にもかけてやりたい言葉は山ほどあったのに
溢れそうになる感情を堪えるのに精一杯で口をついて出た言葉はそれだけだった
「ゆっくりして‥明日、帰ってこい」
『はいっ‥ありがとうございました‥っ』
「じゃあ‥」
これ以上話していると今すぐに迎えに行きたくなるから
電話を切ろうとすると少し慌てた様子で声を上げる
『ま‥待ってください‥!生徒のみんなも一生懸命探してくれてたってお巡りさんから聞きました‥みんなにも本当にありがとうと‥心配かけてごめんなさいとお伝えしてもらっても良いでしょうか?』
俺が先生と電話している事に勘付いて
聞き耳をたてていた生徒達の目に涙がぶわっと浮かぶ
「あぁ‥伝えとくよ」
『ありがとうございますっ‥!では‥本当に有難うございました‥また明日‥宜しくお願いします』
「ん。また明日」
そうして昨日から張り詰めていた空気がようやく和らいで
俺たちは泥のように眠った