【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第6章 ※恋愛のカタチ
「よぉ…どうした。喧嘩なら、いつでも買うぜ。」
桜君の声もする。
「あ、桜ぁ。うん、そうだねぇ…またやろう。
今日は皆にお客さん。ほら…入ろう。」
促され、背中を押されて中に入る。
『こんにちは…お久しぶりです。』
「「「「「「………………」」」」」」
皆の視線が一斉に集まる。
楽しく談笑していたのが嘘のように、しーんとする店内。
頬に熱が集まる。
どうしよう…
やっぱり皆私のことなんて別に待ってたわけ…
考えていると、ガバっと抱き締められた。
「 沙良ーーー!
ちょっと何で十亀と現れんのよ…付き合ってるの!?」
椿さんが目を見開き、潤んだ瞳で私を見つめる。
「 沙良ちゃんっ…久しぶり。
何だ、来てくれるなら言ってよ。」
ことはちゃんもキッチンから出てきてくれた。
「元気そうですね、 沙良ちゃん。けど何で十亀さんと…」
「 沙良ちゃん、久しぶりぃじゃねぇか。元気にしてぇたかぁ?」
以前のように親しく話しかけに来てくれた皆さんに目が潤む。
『…っお久しぶりです…元気です…
会いたかったです…』
「ちょっと誰よー? 沙良泣かしたの…
ほらほら、泣かないのー。可愛い顔が台無しでしょ。」
温かい雰囲気に涙腺は崩壊した。
皆に会いたかった。
また会えたことが嬉しかった。
side 十亀
「良かったねぇ…」
椿野にハンカチを貰う沙良ちゃんを見て、心からそう思った。
「おい……」
和やかな雰囲気に似つかわしくない殺気。
先ほどから感じていた。
コイツは確か…
ちょーじと風鈴に乗り込む時にぶっ飛ばした…
「梶…だっけ?」
そいつは頷くと、舐めていた飴を置き、ヘッドフォンを肩にかけた。
「…ちょっと面貸せ。」
あらあら。
何だろうねぇ…
意外な奴に呼び出されるとヒリヒリするね。
ポトスの表に出ると、そいつは口を開いた。
「…付き合ってんのか? 沙良と。」
「んー…さあねぇ。
今はまだ…付き合ってない、とだけ言っておこうかな。」
少し意地悪しちゃおう。
「……何でアイツと一緒にポトスに来た。」
「うーん…
沙良ちゃんのお父さんに信頼されてるからかなぁ…」
「…………」