【R18】呪術廻戦 〜生かすための縛り・死ぬための縛り〜
第1章 全てのはじまり
あの日の惨劇の夜から5年が経とうとしていた。
女中「全く…とんだお荷物だわ」
女中「ほんと、とっととくたばれば仕事も減るのに」
私、陽菜乃は5歳になっていた。
母は去年から体調を崩し、今はもうあまり起き上がる事さえできなくなっていた。
母「陽菜乃、ごめんね…」
陽菜乃「ううん、大丈夫。私、ご飯貰ってくるね」
襖を開け、台所へと向かう最中女中の視線が針でチクチクと刺されているように痛い程突き刺さる。
女中「見て、来たわ。気持ち悪い……先祖返り?だったかしら。
あの獣の耳と尾、まるであの化け物と同じ、、、」
こそこそと隠す気のない陰口、小さな嫌がらせには慣れた…でも心に積もったその小さな負の感情は私の中の呪力を高めていっているなんてその時の私は思いもしなかった。
陽菜乃「あの、ご飯を頂きたいのですが…」
忙しなく働く女中達は聞こえているのかいないのか、慌ただしく食事の準備をしている。
女中「こんな所で突っ立っておられては邪魔です。それにその獣の毛が食事入っては迷惑です」
陽菜乃「っ……申し訳ありません。食事を、お膳を頂ければ直ぐに立ち去ります」
色々な言葉を…感情を押し込み、飲み込む。
あの日…母が縛りを設け宿儺から逃れたあの夜、御狐神家の血を引く者は全滅した。
御三家の一つである禪院家に身を寄せながら私と母は肩身の狭い思いをしながら生かされていた。
5歳の力で大きなお膳を運ぶ事は決して楽ではない。
本来、御三家まではいかずとも御狐神家は優秀な呪術師の家系でありこのような扱いを受けるべきではない。
だが、先祖返りという人と違う耳や尾、宿儺との縛り……その辺に放っておけるはずもなく仕方なく受け入れざるを得なかったのだろう。
本来なら物覚えがついた頃から読み書きは勿論、術師としての基礎を叩き込まれ、呪力の扱い方、術式の有無も教えられる。
だけど、私に許されたのは与えられた部屋で宿儺との縛りを終える日まで母と静かに暮らす、それだけだった。