第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
生粋なナルシストのような彼ならば、他人の方が有名と言われると気に食わないだろう。
アリアネは接着剤のように舌と顎に引っ付く糖蜜ヌガーと格闘していた。
「それから、俺はあんたの本なんどひとっつも読んどらんと言ってやった。そしたら帰っておった。ほい、ロン、糖蜜ヌガー、どうだ?」
「いらない。気分が悪いから」
それから、ハグリッドは4人に小さな野菜畑を見せてくれた。
そこにあるのは大岩のように大きなカボチャであり、ハリーとアリアネは目を輝かせながら驚く。
ハグリッドはそんな2人を見ながら『ハロウィーンの祭り用だ』と笑った。
「肥料は何をやってるの?」
「その、やっとるもんは、ほれ、ちーっと手助けしてやっとる」
ハグリッドは下手な誤魔化した方をした。
これは何かをしているなと考えたアリアネは直ぐにカボチャに魔法がかけられている事に気がつく。
「『肥らせ魔法』ね」
アリアネの言葉にハグリッドはギクッと肩を跳ねさせた。
「そうね、『肥らせ魔法』ね。とにかく、ハグリッドったら、とっても上手にやったわよね」
「おまえさんの妹もそう言いおったよ」
「あら、ジニーがここに来たの?」
ハグリッドはロンを見ながら言うので、アリアネはロンの妹であるジニーの名前を出す。
するとハグリッドは頷き、『つい昨日会ったぞい』とハリーを横目で見る。
「ぶらぶら歩いているだけだって言っとったがな、俺が思うに、ありゃ、この家で誰かさんとばったり会えるかもしれんって思っとったな」
「あらあら、そうなのねぇ」
「アリアネ、ニヤけるのをやめてくれないか」
「えー……ふふふ」
アリアネはニヤけるのが辞められずに口元をニヤニヤと動かしていた。
だって可愛い妹のようなジニーが可愛らしい行動をしているのだ、ニヤケてしまうのも当然である。
(ジニーったら、可愛いことをしてるわね。私は応援してるわよ)
心の中で妹のような存在である少女に、応援の言葉を送ってあげる。
「俺が思うに、あの子はほしがるぞ、おまえさんのサイン入りの」
「やめてくれよ」
その瞬間、ロンがプーと吹き出してあちこちにナメクジを撒き散らした。
アリアネはもう少しでナメクジに当たりそうになり、悲鳴をあげながらしゃがみこんだ。