第3章 日+英中/甘 Tea time struggle.
「「緑茶で」」
「なっ――!?」
「そうあるよなー! やっぱり我の二人ある! 緑茶あるよなー!」
世界の終わりを目にしたようなアーサーと、嬉しいのか女の子のように胸元で手を合わせ、喜びにるんるんとお可愛らしい耀。
涙目になりながらアーサーが憤慨した。
「なんでだよ! 信じてたのに!」
「そう仰られても……」
大げさすぎるだろ。菊めっちゃ困ってるぞ。というかね、
「さっきミルクティー飲みましたし……」
そうなのだ。さきほどミルクティーをいれてもらったばかり。その前は緑茶。
順番的に次は緑茶が妥当だ。
あと正直、砂糖、牛乳の入れるタイミング、順番、温度など……少し面倒なところもある。
「どうせ入れ方面倒だとか思ってんだろぉ!」
「「いっいえ!!」」
全く同じタイミングで声をあげる私と菊。
それが余計にアーサーへダメージを与えたようだ。
いじけて目が死にかけたアーサーに、見かねたのかやれやれと耀が声をかける。
「我の茶には及ばないあるが、まあ」
「……」
「……み、みるくてぃーの美味しさは認めてやるあへん」
「……耀……」
そっぽを向きながら、耀はそう言った。
アーサーの目に光がもどる。
どうやら仲直りできた……みたい、かな?
それじゃ淹れてくるあるよー! と上機嫌で(アーサーを引きずりながら)耀は戻っていった。
また菊と二人きりになる。
空は深い青に浸され、夜がゆっくり降りてきていた。
再び流れだす静寂。
「私は……」
ふいに、菊が口をひらく。
「さんと二人なら、なんだっていいんですけどね」
瞬間、風が吹き荒れた。
外の木々が一斉に鳴りだし、葉っぱが空に舞い上がる。
髪が煽られ、菊の表情は見えない。
菊が何を言ったのか、風にかき消されてわからなかった。
「……すみません、なんて言ったんですか?」
そう尋ねると、菊はふふっと微笑む。
それから穏やかな表情で
「なんでもありませんよ」
と、言った。
「えー! 何か言ってたじゃないですか!」
抗議しても素知らぬ顔で、菊はカップを口に運ぶ。
これ以上の追及は無駄です、なんて言わんばかりだ。
仕方なく私は沈黙に戻ることにする。
秋は夜長。
もしかしたら聞き出せるかも、なんてね。
了