第1章 祭りの夜
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しばらくして部屋から出てきた杏壱さんと祭りの責務を共に果たした後、家路へ着いた。
もう夜も遅いというのに、遠くの方ではまだ祭囃子の音が聞こえてくる。
無礼講だからといって、気が大きくなる人もいるから今夜は村の治安も悪くなる。
中には強姦まがいのことをしてしまう人もいると聞いて背筋が凍った私は、本当に杏壱さんの元へ嫁ぐことが出来て幸運だと思った。
ここにいれば安心。
杏壱さんが私を守ってくれるから。
湯浴みを終えて、寝室へと入るとすでに杏壱さんが待っていた。
仄暗い寝床で蝋燭の火だけが揺れている。
風で部屋の戸がガタガタと揺れた。
嫌な胸騒ぎがして、思わず杏壱さんの背中に抱き着いた。
「どうしたんだい?」
「……怖い。誰かが入ってきたらと思うと怖いのです」
「はは、は可愛いね。大丈夫だよ、私が守ってあげるから」
そう言って、杏壱さんが私の頬に触れて優しく口付けをしてくれる。
ただでさえ妖艶な雰囲気を纏っている杏壱さんが、蝋燭の灯りのせいなのか今夜は一層、艶めかしく見えた。
「。私のこと好きかい?」
「もちろん、大好きです。この世で一番愛してます」