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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第12章 欠けていくもの【土方歳三編】


土方さんは再度後方へと飛び退く。
だが風間は目にも止まらぬ速さで、土方さんを捕らえると刀を振り下ろした。

「ぐっ……!」
「っ、土方さん!!」

胸を大きく切り裂かれた土方さんは、苦しげに息を洩らす。
そして赤黒い血飛沫が上がると、土方さんはその場に膝をついて畳には赤黒い血が滴り落ちた。

「くっ、はぁ、はぁ……」

血が溢れ続けてはいるけれども、彼は今は羅刹だ。
血はすぐに止まって、怪我も治るだろうと思っていたが私の考えが砕け散る。

何故か、土方さんの傷からは血が未だに溢れ続けているのだ。
本当ならばもう血は止まっていてもおかしくないのに、何故か止まっていない。

「……ど、どうなってやがる……?」
「血が、止まってない……?」
「くっ……、はははははははは、あっはっはっはっはっはっ!傷がいつまでも癒えぬのが解せんか、まがい物の鬼よ」

風間は楽しげに笑い出す。
その笑みには狂気が見え隠れしていて、背筋が冷えるのを感じた。

「この刀は【童子切安綱】といってな……。かの源頼光が、酒呑童子という鬼を退治した時に使ったとされているものだ。我が風間家に代々伝わる品だが……本当に鬼を斬ることができるのかを確かめた者はおらぬでな。ちょうどいい機会と思い、持ってきたまでだ。少なくとも、まがい物の鬼を退治することできるようだ」

嫌な感じがした理由が、風間の説明で納得できた。
鬼を退治するという刀に、鬼の本能が怯えていたのだろう。

勝ち誇った笑みを浮かべている風間は、畳に膝をついている土方さんを見下ろしていた。
だが、土方さんは苦しげにしながらも笑う。

「……まがい物の鬼相手に、ずいぶん大層な物持ち出してくるじゃねえか。よっぽど必死なんだな」
「俺に生涯最大の屈辱を与えた貴様を地獄に送ることができるのならば、どんな手でも使う。この刀で負わせた傷は、塞がらんぞ。俺に勝つ為、羅刹になったーー、あの時の貴様の行動が今、全て無に帰したというわけだ」
「へっ……」

土方さんは胸の傷を押さえながら、ゆっくりと立ち上がり刀を構えた。

「要するに、斬られなきゃいいだけだろ?羅刹になる前は、当たり前にそうしてたもんだ」
「どこまでも減らず口を叩くか……。いいだろう。その強がりがいつまで続くか、確かめてやる」

童子切安綱が青白い光を帯びて光るのが見えた。
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