十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
どこにも立ち寄ることなく、まっすぐ家に帰った僕は、自室に向かう前にシャワーを浴びた。
いつもより帰りが遅かったせいか、母ちゃんはもう寝てたから、父ちゃんには部屋の外からそっと手を合わせた。
冷蔵庫から、母ちゃんがストックしていたチューハイを一本…いや二本拝借して、僕は漸く二階へと上がった。
ベッドを背もたれ代わりにして、床にペタンと座った僕は、早速チューハイの缶を開けた。
母ちゃん、怒るだろうな…
随分前のことだけど、勝手に持ち出して飲んでたら、凄い勢いで怒られたのを思い出した。
ま、いっか…
倍にして返せば良いし…
僕は心の中で母ちゃんに「ごめん」と言いながら、缶を口に運んだ。
風呂上がりのせいなのか、それとも喉がよっぽど乾いていたのかは分からないけど、微かに感じる炭酸の刺激と、甘酸っぱさと冷たさが全身に沁みて来る。
こんなことなら、ツマミになりそうなもんでも買ってくれば良かった。
まっすぐ帰って来たことを後悔しながら、チューハイを飲み進めて行くと、すぐに空になってしまって…
続けて開けた二本目も、あっという間に空になって…
床には空き缶だけが二つ、転がっていた。