第56章 返事 ✴︎
「それ以上……美緒に触れるな。」
『っ、え……あ、かいさん…!?なんで…』
「ふっ…やはり来たんですね?
絶対来るだろうとは思っていましたが。」
突然現れた赤井さんに驚いていると
安室さんは私の手を離してくれて…
赤井さんは私の事を背に隠し、安室さんを睨みつけていた。
「君がこいつを想うのは勝手だが…
俺の女に気安く触れるな。」
「相変わらず嫉妬の塊ですね。
そんなんじゃいつか美緒さんに愛想を尽かされますよ?」
「美緒はそんな事で愛想を尽かすような女じゃない。
…見縊るな。」
2人の間にはバチバチと火花が散っているような感じで
どうすればいいのか戸惑っていると
安室さんが大きなため息をついていた。
「そろそろポアロに戻らなければならない時間なので引きますが…先程美緒さんにも伝えさせてもらいました…隙があれば、奪いに行くと。」
「望むところだ。奪えるものなら…奪ってみろ。」
『っ…』
自信満々にそう答えた赤井さんがカッコ良すぎて
後ろから横顔をジッと見ていると
安室さんは私達の元から立ち去って行き
赤井さんは私の方へと体を向けた。
『す、素顔で外に出たらだめでしょ!』
「ちゃんと変装しているだろう、問題ない。」
変装って…
サングラスにキャップ被ってるだけじゃん!
声もそのままだし!!
『誰かに見られる前に早く出ないと…!』
「…待て、美緒。」
『もう!話なら後…で…ッ…!』
赤井さんの腕を引っ張って歩き出そうとしたら
逆に私の腕を赤井さんに引っ張られていて…
私の体は、強い力で抱き締められていた。
「…嬉しかった。」
『っ、え…?』
「お前が…安室くんの口から俺の過去を聞きたくないと言ってくれて……とても嬉しく思った。」
『!?き、聞いてたの!?』
一体いつから話を聞いていたんだろう…
恥ずかしすぎる…!!
「だが、あの男の口を手で塞いだのは感心しないな。」
『あ…ごめん…なさい…』
「家に帰ったらたっぷりお仕置きだ。」
『…!?』
お仕置き、という言葉を聞きパッと離れたけど
私が逃げないように手を繋がされて…
赤井さんは私の手を握りしめたまま、駐車場の出口に向かって歩き出した。