第56章 返事 ✴︎
カランカラン
「いらっしゃいませー!
あ…!若山先生!お久しぶりです!」
『榎本さん…こんにちは。』
安室さんと話をするためにポアロを訪れると
迎えてくれたのは榎本さんで…
私のことを若山先生と呼び
久しぶり、と挨拶をする彼女は恐らく本人…。
先日会ったあの人ではない事に安心し、小さくため息をついた。
でもその事は榎本さん本人には言わない方がいいよね…?
「若山先生、蘭ちゃん達から聞きましたよー?
この前起きた事件で私のそっくりさんがいたんですよね!?」
…いやいや!もう知ってたんですかー!?
事件が起きたのはつい最近のことなのに
榎本さんの情報を仕入れる早さに驚かされた。
『あ…えっと…そうみたいですね…?』
引き攣った笑いでそう答えるのが精一杯な私…
さすがに悪い人が変装していたことは言えず
話を逸らすために安室さんの姿を探した。
『あの、榎本さん…今日安室さんは…?』
「いますよ!今休憩中なんです。呼んできますねー!」
榎本さんはお店のバックヤードに向かう姿を目で追っていると、安室さんはすぐにお店に出て来て目が合った。
「こんにちは、美緒さん。」
『こんにちは…休憩中なのにすみません…』
「いえ、お気になさらず。
梓さん、すみませんが美緒さんと2人で話があるので、少し外に出てもいいでしょうか?」
「あれあれ〜?内緒話かな〜?」
「あははっ、そういうわけではないんですが
美緒さんのプライベートに関わるお話なので
出来れば2人で話したいんですよ。ね?美緒さん?」
『あ…はい…そうです…』
…やっぱり二重人格だなこの人。
赤井さんに対してはいつも睨んで怖いし、
私にはいじめっ子になるし
今は榎本さんに対してニコニコしてる…
あ、三重人格だな。