第55章 再会
『えーっと……あ、ここだ!』
仕事を終えた私は
波土禄道がライブ前に行うリハーサルを見学するため
会場にやってきた。
入り口にいるスタッフに説明をすると中に入れてもらえて、すでに到着していた蘭ちゃんと園子ちゃん、江戸川くんと昴さんと合流した。
「美緒さん、お仕事お疲れ様です。」
『ありがとう。
ごめんね、急いできたんだけど少し遅れちゃって…
もうリハーサル始まってますよね?』
「いえ…それが…」
『?』
言葉を濁していた昴さんに話を聞くと
今日のリハーサルは予定時間を過ぎているのにまだ始まっていないらしい。
なんでも新曲の歌詞がまだ完成していないようで
波土さんはステージ上で、誰もいない客席を眺めながら書きたいから1人にして欲しいと言っていたそうだ。
しかも波土さんは今回のライブを機に
引退する予定なんだとか…。
園「じゃあ明日も学校だし、ウチらは帰ろっか。」
蘭「そうだね。リハーサルいつ始まるか分かんないし。」
コ「え!?帰っちゃうの!?」
蘭ちゃん達が帰ると言い出すと、それに驚いている江戸川くん。
彼からしたら
17年前の事件の事を知れるチャンスだし
きっとまだここに残っていたいんだろう。
「でも最後のライブのリハーサルなら
見た方がいいのでは…?」
蘭「昴さんには悪いんですけど
実は私達、そんなに波土さんのファンじゃないんです。」
『え…?そうなの?』
「では、ここに来ようと言い出したのは……?」
「……僕ですよ。」
蘭ちゃん達に昴さんが尋ねたところで
私達の背後から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『っ…!!』
後ろを振り向くと、やはり思っていた通りの人物…
安室さんがいて、なぜか榎本さんも一緒だった。
「ポアロの店で僕が波土さんの大ファンだと話したら、園子さんがリハーサルを見れるように手配してくれたんです。
彼が所属するレコード会社に出資しているのが
偶然園子さんの鈴木財閥だったらしくて…」
そ、そんな……気まず過ぎる…。
告白をされたままずっと会ってなかったし
ここには赤井さんもいるし…
一体どんな顔していればいいの!?