第50章 同行
動機はやはり駄菓子屋の土地を買収されたこと。
昔から守り続けて来た大切な場所を
大きな鉄球で取り壊された為、凶器にも鉄球を使用したと自白した後、仙波さんは刑事さんに連行されていった。
『…。』
…何度見ても見慣れないな、連行されて行く人の後ろ姿。
同情する余地はないんだろうけど
私の目には殺人を犯した人の背中は
なんだか寂しそうで…とても悲しんでいるようにしか見えてならないんだ。
阿「そういえばワシの発明したハサミは
なぜ握られていたのかのォ…」
コ「あぁ、あれは樋山さんのダイイングメッセージだよ。」
どうやら床に落ちていたコップのガラスは
フサエブランドのアルファベットがデザインされていて
散らばった破片のアルファベットを取り除き組み変えると
"SENBA"になるようだった。
目「そ、そうか!
確か水の中でハサミを使えば、例えガラスでも
切るように割ることが出来るとテレビでやっていたな。
…でもなんで"SENBA"の方を残さなかったんだ?
そっちの方が分かりやすいのに。」
コ「分かりやすすぎるからだよ。パッと見て自分の名前だってバレたら、犯人に隠されちゃうでしょ?」
「だから被害者は扉を破って入って来た仙波さんに
文字を切り取ったコップを投げつけたんでしょう。
そうすれば壁に当たって割れたと錯覚してくれますし
まさか切り取られた文字の方が重要だとは……、!!」
江戸川くんと昴さんが目暮警部に解説してると
途中で口を閉ざし、何かに気付いたようにハッとした表情に変わっていた。
どうしたのかと思っていると
昴さんは急に私の手を取って出口に向かって歩き始めた。
江戸川くんも同じように外に出て行って
彼の後を追うように阿笠さんも車を停めてある場所に向かって行った。
でも昴さんは私と手を繋いだまま
江戸川くん達が向かう場所とは反対の屋敷の裏の方へと歩みを進めて、上着のポケットからスマホを取り出し、電話をかけていた。
「俺だ。すまないが今から言う場所に
俺の車で来てくれないか?住所は…」
…本当にどうしたんだろう、赤井さん。
急に人通りのない場所に来て
誰かをここに呼んだみたいだし…
ジッと赤井さんを見つめていると
電話を切り終えた赤井さんは私の方へと体を向けた。