第44章 帰国
「世良は赤井さんの妹ってこと、先生は知ってる?」
『うん。この前聞いたよ?
でも彼女は赤井さんが死んだと思ってるから
黙っておいて欲しいって言われてる。』
「やっぱりそうか……
僕が確認したかったのはそれだけだよ。」
話が終わったところで江戸川くんは立ち上がり
ランドセルを背負っていた。
「あ…それとさ、この前灰原が言ってたことだけど…」
『この前…?なにかあったっけ…?』
「ほら、男は急に心変わりするとかさ…」
あー…
そういえばそんな事言われたっけ…
「灰原が少し言い過ぎたかもって気にしてた。
でもあいつ素直じゃねーから
先生に謝りたくてもなかなか言いづらいみたいでさ…」
『あはは、じゃあ伝えてあげてくれる?
私は大丈夫だから気にしないでって。』
灰原さんに言われた時はすごく不安になったけど
あの日のうちに赤井さんに会えたから…
私はもう全く気にしていなかった。
「分かった。じゃあね、先生。
また何かあったら報告して!」
『うん、気をつけて帰ってね。』
江戸川くんと家庭科室の前で別れ、
彼は昇降口の方へと向かって行った。
そして私も職員室へ向かい
翌日の授業の準備やテストの作成、
生徒達が提出した宿題の確認などの仕事をした。
夜にアパートへ帰ってからはいつも大体同じ時間に
赤井さんから電話がかかってきて数分間話す…
そんな日常を過ごしていると、あっという間に1週間が過ぎ
学校が休日である土曜日を迎えた。
安室さんにはこの前タクシーで送ってもらった時に
私の自宅であるアパートを知られているけど
この1週間、訪ねられることはなかったし
連絡が来ることもなかった。