第43章 謝意
side 赤井
工藤邸を後にした俺は
ジョディが運転する車に乗り空港に向かっている。
「わざわざすまないなジョディ。」
「気にしないで?あなたは死んだ人間…
人目につくわけにはいかないんだから。」
死んだ人間か…
先日は美緒とデートした時も沖矢昴の姿だったからな…
早くあの組織を潰して堂々と素顔で歩きたい。
右手につけている美緒からもらった腕時計を見ると
先程俺を見送ってくれたあいつの顔が思い浮かんだ。
「…その顔。」
「ん…?」
「また美緒のこと考えていたんでしょ。」
「…。」
図星なだけに何も言えなかった。
俺はそんなに顔に出ていたんだろうか……
工藤邸を出る前、美緒には俺を疑った罰と称して
唇にキスをしなかったが、本当はあの場でキスを交わすと
アメリカに行くのを放棄してしまいそうになったからだ。
……2週間もあいつに会えないのは
恋人になってからは初めてで
俺は柄にもなくそれを淋しい、と思ってしまっている。