第9章 ローグ 「一輪のジニア」
……帰る?どうしよう。
迷ってクルッと体の向きを180度変えたときすぐ後ろに立っていた人に当たってしまった。
「あ…!ごめんなさい!!怪我は無いですか?」
「ああ」
目の前の真っ黒の服。この声。ローグさんだった。凄い人にぶつかってしまった…とまた私は心臓がひゅっとなった。
焦っている私にローグさんは首を傾げる。
「怪我は無い。お前こそ怪我はないのか」
そう言った彼に安心して一息つくと、その一連の騒動で気づいたユキノさんの声が聞こえた。
「カナタ様!…あ、ローグ様もこちらへ!」
良いか悪いか、呼ばれちゃった…。ローグさんは私の顔を見下ろしてから
「お前がカナタか」
と少し口角を上げて嬉しそうに呟いた。…ん?嬉しそう?
「行こう」
いつの間にかもういつもの調子に戻っているローグさんは歩き出す。私も小走りでその後を追った。
「カナタ様、こちらはマスターのスティング様とその相棒のローグ様です。皆様、こちらはカナタ様です」
4人がけの席に座った私たち。自己紹介が始まり、斜め向こうに座ったスティングさんが軽く手を挙げるので私も慌てて頭を下げた。隣に座ったローグさんは私の顔を横目で見ている。
「カナタ、です…。あの、私お邪魔ではないですか?皆さんの団欒の場に入っちゃって」
こんな誰しもが憧れるメンツの中に私が入っていいわけが無い。すると向かいに座っていたユキノさんが私の手をぎゅっと両手で包み込んだ
「私がお誘いしたんですから邪魔な訳がありません!…それに、実はおふたりもカナタさんと話したいって言っていたんですよ?」
そう言われてきょとんとして顔を向けると、スティングさんが笑った。
「俺らと言うよりコイツな」
ローグさんを指さして笑うスティングさん。ローグさんは小さく頷いて私に聞いてくる。
「お前、俺と会ったことはないか?」
…ナンパでしか聞いたことないその言葉。戸惑っている私にスティングさんが笑いかけて付け足してくれる。
「コイツ、随分ちっさい頃にカナタ・アマリリスって言う女の子と一緒に居たんだってよ。新規リストをたまたま俺が見てたらお前の名前と一緒じゃんって二人でなってさ」