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我が先達の航海士

第1章 我が先達の航海士


スッと右手を挙げて敬礼するの姿を目に焼き付け、龍水のセイル・トレーニングは終わった。神戸にある海運から借りた別荘へ帰る。数日はそこに泊まり、大学に勤める講師達から特別講義を受ける。その後実家に帰宅。帝王学など学問を叩き込まれる予定だが、龍水はそんな事よりとにかくあのが欲しい。海運のご令嬢で、向上心と船への愛に満ちた真っ直ぐで美しい彼女が。

「が欲しい!!」
翌日。大学教授であり、今回の教育プログラム担当者の前で派手に龍水が宣言した。
「七海龍水君。それはお嬢様の事かね?」
丸眼鏡を上げつつ、担当講師が確認する。家は七海財閥と雰囲気が全く違う。最初からNoと断らない。罵声も浴びせず、冷静に話を聞く。他者の個性や考え方を尊重する風土がある。うちの上層部も見習って欲しいと思いつつ、龍水が続ける。

「ああ!あの美女と航海がしたいが、どうすればいい?というかは今何処だ」
とにかくに惚れ込んでいるのは分かった講師が淡々と答えた。まあ子供ならではの大人びたお姉さんへの憧れだろう、と浅く見積もっていたが。

「船員には大きく分けて二つあります。資格を持つ船長、機関長、機関士、航海士等の『オフィサー』。資格を持たない甲板員、機関員、事務員の『クルー』。龍水君の目指す方向にも寄りますが、前者であれば専門の学校を出られた後に、海技士資格の取得が必要ですね。お嬢様は海運の外航船の業務を担当しておりますので、英語を初めとしたグローバルな知識も必要です。——最後の質問ですが、お嬢様は今朝次の航海に出られました」
「なっ……!もう居ないのか!?」
青ざめる龍水に、まさかそんなにが好きなのか?と思いつつ講師が続ける。

「お嬢様はご多忙ですので、一度海に出ると数ヶ月は陸に帰れません。ですので」
わなわなと震える龍水に、講師が台詞を止めた。
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