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我が先達の航海士

第4章 船乗りの休暇


「龍水君、どうした?」
「いや何、貴様の普段着を見るのは初めてでな。つい観察した、すまん!あと髪を下ろしているのも俺は好きだ!」
今日のはクリーム色にグリーンのやわらかな配色のワンピースだ。淡い緑のスカートがくるぶし少し上まで伸びている。ストレートのロングヘアも相まって普段と違う雰囲気だ。
「いや、気にしなくていいから。褒めてくれてありがとう。まあ部屋入りなよ、エアコン付いてるし」
「ああ、邪魔するぞ!」
龍水を部屋に招き入れる。の部屋は机や椅子、ベッドなど最低限が備え付けられている。モノトーンに青が差し色で入った涼しげな部屋。が来客用の折り畳みテーブルや座布団を用意し。冒頭の問答に至る。
「俺が関西に留まるのがそんなに不思議か」
「そりゃ不思議だよ。昨日のうちに自家用ジェット機で東京に帰るって行ってたし。普通に留まるなら帰る必要無いだろ?何かあったはずだ」
の正論にふむ、と龍水が顎に手をやった。
「叔父上の厳命で家の門をくぐれなくてな。何でも帆船航海も散財も物を欲しがるのも辞めて、と婚約破棄をしないと戻れないらしい。そんなの絶対に有り得んな」
どうやら龍水は親が幼い子供によくやる『閉め出し』をされたらしい。今回の航海についてのメディアの報道が原因と踏んだがはは、と苦笑いした。

「成程ね。週刊文夏に『文夏砲』やられたのはデカいからね、七海財閥からすると」
納得しつつは手土産の蓬莱の豚まんを電子レンジであっためた。戸を挟み廊下に居るフランソワに中に来ないかと声をかけたが、充分だと断られる。
「あの訳の分からん週刊誌か?」
事態をよく分からない龍水が尋ねてきたので頷く。
『週刊文夏』という雑誌では芸能人のスキャンダルや政治家の汚職など一大スクープを扱う事もある。その記事により活動停止になる芸能人が出たり世を騒がせるので、『文夏砲』と呼ばれる。龍水の過去の道楽息子っぷりは、そこでこと細やかに書いてあるのだ。

【天下の七海財閥、御曹司の素顔!資産の散財っぷり!!】とデカデカ記事を書かれ。七海財閥の株価が急下落したそうだ。上層部が対応に苦労している話は耳にして、龍水に進言もしたが矢張りこうなったか。
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