第8章 私のストーリー
それから数時間後――
朝日の差すベッドの上で、シェリーはもぞもぞと目を覚ます。
ちょっと寝坊してしまったようだ。
ぼんやりした頭で思い返すのは、昨夜から早朝までシルフォードにひたすら愛撫されたことだ。
ゆ、夢じゃないのよね……!?
本当に毎日、お兄様に…?
だから濡れてしまっていたの…!?
シェリーはボッと顔を真っ赤にする。
あの魔法書をくれた女の人はこの事を知っていたのだろうか。指示通りに寝たフリをしたら、最近の身体がおかしい理由が解決したのだ。
シェリーが追加でストーリーを書き始めた時期と、シルフォードが愛撫を始めたのがたまたま同時期だったのだろう。
それにしても……
「ど、どんな顔をしてお兄様に会えばいいの!?」
シェリーは枕に顔を埋め、じたばたと暴れる。
まさか実の兄と、なんて想像もしていなかった。
それなのにシェリーの頭に浮かぶのは罪悪感ではない。
気持ちよかった。
幸せだった。
またしてほしい……。
「わ、私ってばぁぁぁっ!!」
じたばた続けていると、ノックの音がして侍女が姿を現す。
「おはようございます、お嬢様。皆様、既に食堂でお待ちですよ。急いでお支度を」
「わ、わかってるわ…」
外出などの予定がない限り、家族で毎日食事をとる。
これは我が家でのルールだ。
そのため、朝食でさっそくシルフォードと顔を合わせることになる。
どっちにしろ逃げられない状況だ。
それに、シルフォードの発言からすると、もう何回もあのような行為が行われているのだろう。
そして、毎朝なにくわぬ顔で朝食の席に着いているのだ。
「じゃぁ私もいつも通り…にしないとね」
「? 何かおっしゃいましたか?」
「な、なんでもないわ」
独り言も危険だ。
侍女にバレて……バレて?
人払いはしてある、とシルフォードは言っていた。
つまり、この侍女は前から知っていたのではないだろうか!?
――そんな事を確認する勇気はなく、シェリーはぐったりしながら食堂へ向かうのだった。