第30章 抱きしめたい
ゆっくりと目を開けば、見慣れた古い木目天井が視界に入った。
フワリと揺れる白いカーテン、その先からは心地の良い風が入り込んできている。
身体を起こそうとするけれど、酷く気怠くピクリとも動かない。所々痛みはあるし、腹の中心部からは感じたことのないような鈍痛がする。
その場所を撫でようにも手先に力など入らなくて、そこで自身の手が何か温かなものに包まれていることにようやく気が付いた。
「……っ」
白銀の髪が風でまるで綿毛のようにふわふわと揺れている。
ゴツゴツと大きな男の人の手にしてはやけに色白で綺麗な掌が、私の手を包み込んでいた。
五条…先輩…
「…なん…で……」
私の手を握りしめ、ベットに顔を付けるようにして眠っている五条先輩の姿だった。
私の呟きが聞こえたのだろう。ピクリと動いた肩、そしてガバリと勢いよく顔が持ち上げられる。その顔は珍しくサングラスをしておらず、キラキラと輝く碧が私を真っ直ぐ捕らえた。
「お前…」
「…ごじょ…先輩」
久しぶりに声を発したからだろうが。やけに掠れて情け無い声に聞こえた。
こちらを見つめる五条先輩の顔は少しばかり歪んでいて眉間に皺がよっている。多分…きっと、心配をかけてしまったはずだ。