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二人の航海者

第7章 青空と曇り空


新世界の役者達を輩出した科学学園では、引き続き特別授業を行った。蒼音が書道や簡単な生け花、合唱をする他に、自前でドラゴを払い特別講師も呼んだ。

漫画家の先生を呼んで絵の勉強やお話、マンガ作り。メンタリストゲンのマジックや心理テクニック講座。ちなみにゲンの恋愛テクニック講座が特に女子に大人気だった。

時の流れ行く新世界で、龍水は蒼音に会う度に何処かささやかな事を褒め称える様にした。フランソワにバレンタインのお返しで言われた台詞の続きはこうだ。

【蒼音様は、形の残る気持ちの込め過ぎた《重い》物は受け取りません。ですが、普段ご自身で作られてお食べになるくるみとどんぐりのクッキーであれば、後腐れも無く貰って頂けるでしょう】と。

だから形の残るプレゼントは敢えて贈らなかった。代わりに蒼音の好む素朴な味のお菓子の差し入れを作り、ふとした時に『今日は髪を括ったのか。動きやすさ重視か?効率重視の貴様らしくていいぞ』などと褒めた。蒼音には形の残らない、言葉がいいのだろう。それも、派手で着飾った物より素朴な言葉が。今までの『欲しい』や『美女』の龍水の手で使い古された言葉より、不思議と蒼音の反応も良かった。

蒼音だけの、オーダーメイドの菓子と言葉を贈る。そして、蒼音からまた笑顔をプレゼントされるのだ。

「プレゼントは本来こういう物だったな、蒼音」

お互いの事を思い合い、喜び合える関係に、龍水は心地良さを感じた。時間と共に進む造船の中。龍水は、自身の付けた『蒼音との会話日記』に連ねた思いを見返した。今日は蒼音がどんな事をしていた、なんと言葉をかけたらどんな反応が来たのか。蒼音の生態観察でもあるそれを見ながら、龍水は青空を見上げた。

今日も、科学学園の授業が始まる。
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