第21章 第二十話 14番目
「コムイさん、泣いてたね…」
「損害賠償金、慰謝料、援助金…物凄い額だろうからね…」
ベッドに座りながら苦笑する彩音に、不二が言った。
ティモシーが自分が教団へ入る代わりに条件を出した事は、今までの盗品の賠償金、無実で捕まった人たちの慰謝料、そして孤児院が一生困らないように援助をする事だった。
少し考えただけでも顔が青ざめる、いや、失神するレベルの額だ。
「そういえば、エミリアさんが黒の教団に入団するんだって?」
「うん、そう言ってたね」
「ティモシーくんが心配なんだね」
エクソシストほどではないけれど、前回の事もある。
教団だって完全に安全ではないし、命に関わる事もある。
そんな所なのに、よくガルマーが許してくれたなと彩音と不二は思った。
「まぁ、エミリアさんが強引に押し切ったんだろうけどね」
「ふふ、だろうね!」
ところで…と彩音が少し言いづらそうに言う。
「ユキサと、アレンや神田は…?」
パリから帰ってきて数時間しか経っていないが、彩音が心配そうに不二に問いかけた。
ユキサは教団へ戻って来てからすぐに目を覚ました。
体の方はいつものように言霊の使いすぎによる疲労だけで済んでいる。
彩音はその後の3人が気になるようだった。
「んー…彩音も見てて分かってると思うけど、ユキサはあの時気を失っていたから…アレンにキスされた事は知らないみたいなんだよね…強いて言うならアレンと神田の様子なんだけど…なんていうか、普通なんだよね」
「普通?」
「ま、良くも悪くもいつも通りって感じ」
いつも通り顔を合わせれば何かしら言い合いをしていると不二は言った。
その言葉に彩音は少し疑問を感じた。
神田ならもっとアレンを敵視しそうな気もするが…。
「ちなみに、アレンもユキサに対して特になんの変化もないよ。つまり3人ともいつもと変わらずって感じ」
「んー…どういう事なんだろう…?」
いつもと変わらない事は良い事ではあるのだが、どうも腑に落ちない。
何せ自分たちは衝撃的なシーンを目の当たりにしているのだ。
なのに当の本人たちが何も変わらないというのは、一体どういう事なのだろうか。