第2章 誤解から生まれた激情
幸せそうな顔をしていた独歩が、恐ろしいほどに表情をなくして呟く。
何をどうしたら、彼からこんな執着心を引き出せるんだろう。
私は特に何かしたわけでもないのに。
彼が私に執着する理由が全然浮かばない。
「余計な事言わないように、口塞いどくか……」
「どっ……んんンっ!」
唇がキスで塞がれて、予告もなく律動が始まった。
「んっ! んンっ! ふっ、はぁっ、ぁ、はっ……」
最初から激しい衝撃で揺さぶられ、頭がふわふわし始めて朦朧とする。
「ふっ、んっ……はぁ……気持ちいいか? はっ、んっ……」
何か言おうにも、唇を塞がれながらだから何も言えず、ただ必死に酸素を求める。
激しく揺さぶられ続け、手首が麻痺してきているのか、感覚がない。
そして私のいやらしい体が、独歩の与える快感に翻弄されて、歓喜に震える。
興奮から生まれる熱気が部屋を支配して、考える力を奪っていく。
どのくらいの時間が経ったかも分からない。
快楽に、思考が働かない。
「その顔いいなっ……はぁ……もっと、気持ちよくするっ、からっ、あっ……俺の、もの、にっ……」
甘美な誘惑に、何を言われても肌に軽く触れるだけで、喜んでしまう。
「出すっ、ぞっ……」
彼の全てを逃さないようにするみたいに、脚を独歩の体に巻き付ける。
その後何度も繰り返された行為に、翌日の私の体はボロボロで、手首に残った縛った後の痣を隠すのに困ったのは言うまでもない。
独歩は、まるで何事もなかったかのように、いつも通り仕事をしている。
あれは夢だったのかと錯角してしまうほどに、自然だった。
けれど、それもすぐに違うと思い知らされる。
私がコピーをする為に機械の前で作業をしていると、お尻に何かが触れて声が出る。
「静かにしないと、誰かに聞かれるぞ」
ならその、何処のセクハラ親父なんだと言いたくなるように、お尻をいやらしく撫でるのをやめて欲しい。
幸い、コピー機は衝立で囲まれているから、他の社員に見つかるとしたら背後から来ない限り見られる事がない。
しかもここは、端の方にある。
「んっ……やっ……」
「会社でそんないやらしい声で腰くねらせて……は可愛いな……」
昨日の熱を思い出して疼く。