第7章 寂しさ
「僕急いでシャワー浴びてくるから!あ、待っててくれる?ベッドに行ってて良いから!」
証拠隠滅だろうか…だったらリビングに来る前にシャワーを浴びてきて欲しかった。そしたらこんな気持ちになることも…それどころかこんな考えが生まれることすら無かったはずだから。
いや、そもそも私が予定とは違う日に帰って来なければよかった話か…
「うん」と小さく呟けば、悟は「3分で入ってくるから!」と慌ただしくリビングを出て行く。
ゆっくりで良いよって言いたいはずなのに、私の喉はまるで水一滴無くなったみたいにカラカラで。小さな声すら出ない。
だけど待っていると約束した以上待っていないわけにもいかず、私はソファーを立ち上がりとぼとぼと歩くと寝室を目指した。先に眠ってしまいたい。寝れる気はしないけど…悟が来る前に寝たフリをしちゃいたい。
布団に潜り込みながら何故だか具合悪いほどにキリキリとする胸を押さえながら、掛け布団を顔までかけた。
まるで暗い海底に沈むみたいに…どんどん布団に埋もれていくような感覚になる。
自分の両親が政略結婚ではあるが、仲睦まじくいつまでもラブラブだったからか、当然私と悟もそうなるものだと思っていた。でも良く考えたら私達は都合が良いからと幼なじみである互いを結婚相手にしたようなものだ。元々仲の良い私達だからと。これから恋人を探すよりよっぽど良いと。
そう、その程度の関係に過ぎないのだ。