第31章 緋色の
『あ、赤井が!?
赤井がそこにいるのか!?』
画面越しでも分かるほど、その顔は動揺していた。
赤井さんが、そこにいる?どういう事だ…。
だったら、今この画面に映っている沖矢さんは何者なんだ?
『それで追跡は!?
動ける車があるのなら奴を追え!!今逃したら、今度はどこに雲隠れするか…』
大きな声で叫ぶあいつに、沖矢さんがコホンと1つ咳払いをした。
『すみません、少々静かにしてもらえますか?
今、この家の家主が大変な賞を授賞してスピーチをするところなんですから』
今の私には、そんな沖矢さんの言葉に耳を傾けている余裕なんて無かった。
もし…もし本当にここでは無い別の場所に赤井さんがいると言うのならば、私のあの推理は全て間違っていたのか?
いや、もし私のが不十分だったとしても、先程あいつが話した推理は完璧だった。どこにも穴などない。
じゃあ、この画面の向こうで一体何が起きているんだ?
電話の続きが聞きたかったが、静かにしろと沖矢さんに言われてしまったために声を抑えていて何も聞こえてこない。
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『おい、どうした?状況は!?応答しろ!!』
『久しぶりだな、バーボン。いや、今は安室透君だったかな?』
『赤井、秀一…!!』
『君の連れの車をオシャカにしたお詫びに、ささやかな手土産を授けた。楠田陸道が自殺に使用した拳銃だ。
入手ルートを探れば何か分かるかもしれん。
ここは日本、そういう事は我々FBIより君らの方が畑だろ?』
『…っ!?まさかお前、俺の正体を!?』
『組織にいた頃から疑ってはいたが、あだ名が“ゼロ”だとあのボウヤに漏らしたのは失敗だったな。
それに、私情を交えて彼女、にも近づきすぎだ。
お陰で調べやすかったよ、“降谷零くん”』
『っ!?』
『恐らく俺の身柄を奴らに引き渡し、大手柄をあげて組織の中心近くに食い込む算段だったようだが、これだけは言っておく。
目先の事に囚われて、狩るべき相手を見誤らないで頂きたい。
それともう1つ、彼女は我々FBIの保護下に置かせてもらう』
『な、何を言っている…!?』
『今の彼女の状況をよく考えろ。これが最善だ。
…それと、彼のことは今でも悪かったと思っている』
そう言い残し、赤井は携帯を持ち主へと投げ渡した。
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