第4章 初 体 験(♡♡)
翌日の部活は休みになったことを、孤爪から聞いた。順位決定戦と代表校決定戦は来週に控えているが、それまでにリエーフの足は治るだろうか。そう思いながら、邪魔にならないようにとみんなが解散するより前に、黒尾とわたしは会場を後にした。
リエーフには、お疲れ様とだけ送った。あとは、向こうが話したいと思った時に、落ち着いた時に連絡をくれればいい。
『なぁんか、ほんとに、あっという間だね』
「呆気ないほどに、な」
うちらもインハイそうだったよねと苦笑いする。またしてもスマホの通知が鳴る。今度は梟谷の新マネちゃんから。
『あ、梟谷、決勝で勝ったっぽい』
「まじかよ、でもまだあるからなぁ」
『け…赤葦いるから大丈夫でしょ』
危ない、こいつの前で名前で呼びそうになった。絶対に面倒臭いから嫌だ。気を付けよう。
そうして、帰宅した家には誰もいなくて、テーブルの上のメモには母の字で‘お父さんの実家に数日行ってるね’と書いてあった。さらにその下に小さく、彼氏呼ぶならお父さんに内緒、とも。別にメッセージくれればいいのにと思いつつ、そういえば母は、昔からこう言う手紙が好きな人だった。
手を洗ってリビングに戻ると、スマホから流行りの着信音。
『お疲れ様、リエーフ』
「おつかれ、さまです…」
ずず、と鼻をすするその声に、いつもの覇気は無い。
『足の痛み、どう?』
「ガッツリ冷やしてるんで、今はそんなに」
『そっかそっか、病院は明日?』
「学校は午前休んで行く予定です」
『そう、重くないといいね』
重くない、訳あるだろうか。あの元気玉リエーフが試合に出られなくなるぐらいだから、多分靭帯の1,2本ダメになってる気がする。それでも、願掛けのように、思うしか無かった。
あの、と、控えめな声でリエーフが呼ぶ。
「悠里に、会いたい。すごく会いたい」
『明日病院終わり会いに行こうか?』
午後は確か休講になったし、と続けると、違いますと否定される。
「今から、会いたいんですけど、
うち、今日は親もアリサもいて、」
そっち行っても良いですか。
お母さん、どうかお父さんには内密に、お願いしますね。